猫絵十兵衛 御伽草紙

『猫絵十兵衛 御伽草紙』というコミックをご存知ですか?

私は、存じ上げませんでした。

お友だちが、「絶対好きだと思うから!」と強くおススメしてくれました。

さらに、なんと17巻まで プレゼントしてくれるという太っ腹ぶり。感謝!

 

 

作品紹介

作者は、永尾まるさん。『ねこぱんち』という月刊漫画誌で連載中の作品です。

江戸時代を舞台にした、猫たちと人々のものがたりです。

 

登場人物

主人公は十兵衛という名の、ネズミ除けの猫絵を描いては売って歩く、猫専門の絵描きさん。

猫の言葉を理解し、ちょっと不思議な力を持っています。人間の絵を描くのは苦手という一風変わった絵師です。

相棒は、ニタという大きな三毛猫。実は元猫仙人の猫又で、人間に化けるなどはお手のもの、それ以外にもものすごい能力の持ち主です。

十兵衛が描いた絵にニタが魂を吹き込むことによって、ネズミ除けの効果は1年間続くのだとか。

他にも、十兵衛とニタが暮らす長屋の隣人たち、江戸の街の人々、十兵衛の絵の師匠と弟弟子たちなど、たくさんの人と猫が登場します。

 

おはなし

江戸の市井に起きる、猫にまつわる様々なできごと。笑いあり涙ありの人情ものです。

不思議な力を持つ主人公の十兵衛は、猫と人にまつわる出来事に関わって生きています。

猫又やあやかしが登場したり、ちょっと不思議なことが起きたりしますが、ホラーではありません。

ファンタジー一辺倒ではなく、貧しさゆえ幼くして奉公に出る子どもの話や、一見華やかな花魁の孤独など、なかなか骨太なお話も多々あります。

私は時代小説(主に藤沢周平作品)が好きなので、あまりにも突拍子もない設定だったり、毎回お決まりのパターンだったりすると、確実に鋭い突っ込みを入れてしまうのですが、この作品ではそんなことはなく、ワクワクしながら読んでいます。

全体に一貫して明るく楽しいムードが流れていますが、ハッピーエンドの予定調和的なお話ではありません。

しかし、重い内容でも爽やかにまとめられていて、どんな結末になっても必ずどこかに救いがあります。

江戸の文化風俗が、美しく優しいタッチの絵で描かれているところも、私の好きなポイントです。

 

 国芳の猫絵

十兵衛の絵の師匠は歌川国芳をモデルにしている、と作品のあとがきで作者が語っていました。

国芳!猫好きの方はご承知の通り、歌川国芳は大の猫好き。

多くの猫とともに暮らし、いつも懐に猫を入れて絵を描いていたそうです。

私は国芳の猫絵が大好きです。

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私が大切にしている手ぬぐいたち。国芳の猫柄です。

この作品に登場する猫たちは、愛らしくかわいらしい画風で描かれているのですが、作中に出てくる主人公の十兵衛やその他の絵師が描く数々の絵は、きちんと浮世絵のタッチになっていて、作者の力量にただただ感服するばかり。

国芳ファンの方にも、おススメです。

 

漫画のすばらしさ

私にとって漫画とは、内容だけではなく絵が好みでないとなかなか読み進められないのですが、この作品はその点の問題はまったくなし。

繊細な絵柄ですが、女性向け漫画にありがちなキラキラ感やしつこさがなく、無駄な線がそぎ落とされたシンプルさが気に入りました。 

私は漫画に詳しくなく、おもしろいと思えば読む、くらいのものです。

そんな私の乏しい漫画の知識から想像しているだけですが、漫画家さんってすごい!とは幼少のころから思っていました。

だって、映画でいえば、監督、脚本、衣装、音響、ロケハンその他もろもろ、細かいところまで多岐にわたってひとりで何役もこなして作品を作り上げるお仕事だから。

もちろんアシスタントさんや担当編集さんなど、サポートしてくれる人はいますが、それでもやっぱり基本は漫画家さんの頭の中に繰り広げられる世界がなくては、どうにもならないのです。

絵を描くという技術も必要だし、読者をひきつけるストーリーテリングの能力も大切。

そう思うと、やっぱりすごい!としか思えません。(貧弱なボキャブラリーで恐縮です)

漫画は大切な文化のひとつなのだな、と実感した作品です。